← ブログ一覧
セキュリティai導入llm

ISO 42001とは|AIマネジメントシステムの要求事項と準備

ISO 42001(ISO/IEC 42001)とは、AIを開発・提供・利用する組織のためのAIマネジメントシステムの国際規格だ。要求事項の構成と日本での認証の状況を一次資料で確かめ、企業が準備することを表にした。

AIの利用規程を作り、AI事業者ガイドラインも読んだ。その次に取引先や監査の場で名前が出てくるのが、ISO 42001だ。情報セキュリティのISO/IEC 27001のAI版と説明されることがあるが、何を求める規格で、認証を取るべきかは、規格の中身を見ないと判断できない。

ここでは、ISO 42001とは何かを一次資料で確かめ、要求事項の構成と日本での認証の状況を整理する。そのうえで、認証を取るかどうかに関係なく、企業が準備しておくことをまとめる。

ISO 42001とは

ISO 42001(正式にはISO/IEC 42001:2023、Information technology - Artificial intelligence - Management system)とは、AIを扱う組織が、AIマネジメントシステムを作り、運用し、継続的に改善するための要求事項を定めた国際規格だ。2023年12月18日に発行された。ISOは、世界で初めてのAIマネジメントシステムの規格だと説明している。

規格の概要は、AIシステムを使う製品やサービスを提供する組織にも、利用する組織にも使えるとし、規模、種類、性質を問わずに適用できるとしている。AIを開発する会社だけの規格ではなく、生成AIを業務で使うだけの会社も対象に入る。認証は任意だとISOは説明している。

日本では、ISO/IEC 42001を技術的な内容と構成を変えずに日本語にしたJIS Q 42001が、2025年8月20日に制定された。

マネジメントシステムという言葉は分かりにくいが、私の見方では、「AIについて方針を決め、リスクを洗い出し、対策を決め、実際に回っているかを確かめて直す仕組みを、文書と記録で示せる状態」と読めばよい。個々のAIシステムの性能を保証する規格ではない。

ISO 42001の要求事項の構成

ISMS-ACは、規格の構成はISO/IEC 27001などのマネジメントシステム規格と同様で、共通の要求事項に加えて、AIシステムを開発・提供・利用する組織がとるべき対応を定めていると説明している。27001の認証を持つ会社なら、骨組みは見覚えがあるはずだ。

JIS Q 42001の目次では、要求事項は4章から10章に並ぶ。

章名前中身の例
4組織の状況自社がAIで果たす役割、利害関係者、AIマネジメントシステムの範囲
5リーダーシップ経営者の関与、AI方針、役割と責任
6計画策定リスクと機会への取り組み、AIの目的
7支援資源、力量、認識、コミュニケーション、文書
8運用AIリスクアセスメント、AIリスク対応、AIシステムインパクトアセスメント
9パフォーマンス評価監視と測定、内部監査、マネジメントレビュー
10改善継続的改善、不適合と是正処置

規格の後ろには附属書が4つある。附属書Aは参考となる管理目的と管理策、附属書Bはその実施の手引、附属書CはAIに関係する組織の目的とリスク源、附属書Dは複数の分野でのAIマネジメントシステムの使い方だ。認証機関のBSIは、附属書Aは9つの管理の項目で38の管理策をカバーしていると説明している。

27001と違うところ

ISMS-ACは、ISO/IEC 42001に特徴的なこととして、次を挙げている。

私の見方では、いちばん大きな違いはインパクトアセスメントだ。情報セキュリティのリスクは主に自社の情報資産への影響を見るが、AIシステムインパクトアセスメントは、AIの判断や出力が個人や社会に与える影響まで見る。人の採用、与信、問い合わせへの自動回答のように、AIの出力が人に直接届く業務ほど、この評価が重くなる。

関連する規格と、日本での認証の状況

ISO 42001のまわりには、手引きの役割を持つ規格がいくつかある。

規格中身発行
ISO/IEC 23894AIのリスクマネジメントの手引き2023年2月
ISO/IEC 42005AIシステムインパクトアセスメントの手引き。42001を補う2025年5月
ISO/IEC 42006AIマネジメントシステムを審査・認証する機関への要求事項2025年7月

日本では、ISMS-ACが2025年7月8日に、ISO/IEC 42001の審査と認証を行う機関の認定を始めたと発表した。2026年1月14日には、最初の認証機関としてSGSジャパンとテュフ ラインランド ジャパンの2社を認定している。ISMS-ACの公開リストでは、2026年9月29日時点で、認証を受けた組織は13だ。この数は、ISMS-ACが認定した認証機関による認証だけを数えたもので、海外の認定機関のもとで認証を受けた組織は入っていない。

海外の大手も認証を公表している。AWSは2024年11月に、Amazon BedrockやAmazon Q Businessなどを範囲としてISO/IEC 42001の認証を受けたと発表した。Anthropicは2025年1月に認証の取得を発表している。Googleは、Google Cloud、Google Workspace、Gemini(アプリ)が認証の対象だとしている。Microsoftも、Microsoft CopilotやMicrosoft Foundryなどを範囲に入れている。

利用する側の企業にとって、これは調達のときの確認材料になる。AIサービスの提供者が42001の認証を持っているかは、その会社のAIの管理の仕組みを外から確かめる手がかりのひとつだ。ただし認証が示すのは仕組みがあることで、個々のサービスの出力が正しいことではない。

企業が準備すること

私の見方では、認証を取るかどうかを決める前に、規格の要求事項を社内の点検表として使うのがよい。次の表は、要求事項を、AIを使う側の企業が手をつける順に並べ直した私の整理だ。

順番やること対応する章
1社内で使っているAIの一覧を作る。誰が、どの業務で、どのデータを渡しているか4
2AIの方針と責任者を決める。利用規程があれば、それを出発点にする5
3AIごとにリスクを洗い出し、対策を決める6、8
4出力が人に直接届くAIについて、影響を評価する8
5担当者の教育と、規程・記録の置き場所を決める7
6定期的に点検し、見つけた問題を直す流れを作る9、10

私の見方では、1の一覧づくりにいちばん手間がかかる。会社が把握していないAIの利用(シャドーAI)が見つかることがあるからだ。2の方針は、生成AIの社内利用規程の作り方で作ったものを出発点にできる。日本の行政の文書との関係では、総務省と経済産業省のAI事業者ガイドラインのチェックリストと、42001の要求事項は重なる部分が多い。ガイドラインで点検し、仕組みとして回すところを42001で固める、という使い分けが現実的だと私は考える。

全体の考え方はAIガバナンスとはに書いた。AIを業務に組み込む実装の側から、こうした仕組みづくりに関わる職種はFDEとは?Forward Deployed Engineerの意味と仕事内容で説明している。

社内で使われているAIを洗い出し、リスクと設定を点検する診断は、AI利用セキュリティ診断で紹介している。

シェア

記事を読んで、FDEが気になりましたか?

自社のAI活用課題をFDEの視点で整理します。30分、無料でお話しましょう。

無料相談を予約する

関連記事

← 新しい記事Claudeのセキュリティ|法人で使うときのデータの扱いと設定