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ai導入組織論キャリア

AI人材の育成|研修より、現場の仕事で育てる方法

AI人材の育成を、研修ではなく現場の仕事で進める方法をまとめた。IPAのDX動向2025で見るAI人材不足の実態、デジタルスキル標準ver.2.0の6つの類型、仕事で育てる進め方と使える助成金を表にした。

「AIを使える人がいない」。生成AIを入れた会社が次にぶつかるのは、この悩みだと私は見ている。研修を組み、資格の取得を勧め、社内の勉強会を開く。それでも、業務の中でAIを使って仕事を変える人はなかなか出てこない。

私の見方では、AI人材の育成がうまくいかない理由の多くは、学ぶ場はあっても、学んだことを使う仕事がないことにある。ここでは、AI人材不足の実態を公的な調査で確かめたうえで、どの人材の型を育てるかを決め、現場の仕事で育てる進め方をまとめた。

AI人材の不足を数字で見る

IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2025」は、日本・米国・ドイツの企業を比べた調査で、調査期間は2025年2月上旬から3月下旬だ。DXを推進する人材について、次の結果が出ている。

項目日本米国ドイツ
人材の「量」が不足している(やや不足+大幅に不足)85.1%——
人材の「質」に過不足はない3.8%52.9%25.1%
最も不足している類型ビジネスアーキテクトデータサイエンティストデータサイエンティスト
育成の施策で「特に支援はしていない」36.6%——
DX人材の評価の基準がない75.7%10.0%18.9%

量の不足について、米国とドイツでは「やや過剰」と「過不足はない」の合計が、それぞれ73.6%と52.5%だった。人材が足りないと感じているのは、3か国の中で日本だけだ。それでも日本では、人材の確保を行っていない企業が19.4%あった。育成の予算を増やした企業は日本が2割強で、米国の7割弱、ドイツの6割弱を大きく下回る。

AIそのものの利用は進んでいる。総務省の令和8年版情報通信白書では、何らかの業務で生成AIを使う日本企業は86.4%に達した。一方で、生成AIによる業務の変革について「組織的な取組はない」と答えた日本企業は27.0%で、米国・ドイツ・中国より目立って高い。道具は入ったが、それを使って仕事を変える人と仕組みが追いついていない。

注目したいのは、日本で最も不足している類型がビジネスアーキテクトだという点だ。DX動向2025は、ビジネスアーキテクトを、目的の設定から導入、導入後の効果の検証までを、関係者をコーディネートしながら一気通貫して推進する人材と説明している。モデルを作れる人より、業務とAIの間をつないで最後まで持っていく人が足りない。

研修だけでは育たない理由

人の育ち方について、よく引かれる目安がある。米国のCenter for Creative Leadershipの70-20-10の法則で、人は知識の70%を難しい経験や任務から、20%を育成につながる人との関係から、10%を講座や研修から学ぶ傾向があるとする。同団体は、この法則は30年以上にわたる「Lessons of Experience」の研究から生まれたと説明している。厳密な測定値ではなく目安だが、研修が学びの一部にすぎないことは示している。

DX動向2025も、同じ方向の結果を出している。米国とドイツの企業は、育成の施策として「学んだことを業務に活かす仕組み、工夫を用意している」「チームや組織で学び合う文化、習慣を築いている」などの回答率が高かった。日本は「特に支援はしていない」が突出していた。必要なスキルと今の過不足の両方を把握できている企業は、米国とドイツの約半数に対し、日本は14.9%だった。

私の見方では、研修だけの育成が止まる理由は3つある。

  1. 学んだあとに任される仕事がない。使わない知識は定着しにくい
  2. 何ができれば一人前かの基準がない。本人も上司も、伸びたかどうかを判断できない
  3. 業務を変える権限がない。AIで手順を変えたくても、変えてよいかを決める人がいない

3つとも、研修の中身を良くしても解決しない。解決するのは、仕事の設計の側だ。

育てる人材の型を決める

育成を始める前に、どの型の人材を育てるかを決める。拠りどころとして使いやすいのが、経済産業省とIPAのデジタルスキル標準(DSS)だ。DSSは、全員向けの「DXリテラシー標準」と、DXを推進する人材の役割とスキルを定めた「DX推進スキル標準」の2つでできている。

2026年4月16日に公表されたver.2.0では、データマネジメントの類型が新設され、推進する人材は6つの類型になった。データサイエンティストの類型には、AIの実装・運用やAIガバナンスに関するスキルが加わった。生成AIを踏まえた改訂は、2023年8月と2024年7月にも行われている。

6つの類型ごとに、現場の仕事で最初に任せるとよいことを並べた。右の列は私の整理で、DSSに書かれているものではない。

類型現場の仕事で最初に任せること
ビジネスアーキテクト1つの業務について、AIで変える前と後の手順と、動かしたい数字を決め、関係者を巻き込んで最後まで進める
デザイナーAIを使う画面や手順を、実際に使う人の作業を見て直す
データサイエンティスト出力の正しさを測る評価の方法を作り、本番の結果で見直す
データマネジメントAIに読ませる社内の文書とデータの置き場所、権限、更新の手順を整える
ソフトウェアエンジニアAIを既存のシステムにつなぎ、本番で動かし続ける
サイバーセキュリティAIに入力してよい情報と、AIに許す操作の範囲を決め、点検する

全員を同じ研修に通すより、まず1つの業務を選び、その業務に要る型を2〜3人で揃えるほうが早い。ビジネスアーキテクトが不足しているなら、その役を担う人を最初に決める。

現場の仕事で育てる進め方

私の見方では、次の順で進めると、育成と業務の改善を同時に回せる。

順番やること決めておくこと
1AIで変える業務を1つ選ぶ動かしたい数字(処理時間、件数、誤りの数)
2担当を決める。業務を知る人と、作れる人を組にする誰が業務の手順を変えてよいかの権限
3作る前に、要る知識だけを短く学ぶ研修の範囲を、その業務に要るものに絞る
4小さく作って本番の業務で使い、数字を測る何週間で、何が動けば次に進むか
5やったことを手順書と評価の記録に残す次の担当が読める形
6次の業務に、2の組の片方が教える側として入る教える側の時間を、本人の評価に入れる

外部の力を借りるなら、作ってもらうのではなく、一緒に作りながら社内の人に引き継ぐ形にする。内製と外注の分け方はAI開発は内製化か外注かで、一緒に作る支援の形はAIの伴走支援とはで書いた。

費用の面では、厚生労働省の人材開発支援助成金に、事業展開等リスキリング支援コースがある。令和4〜8年度の期間限定で、新しい分野の知識や技能を身につける訓練の経費と、訓練の期間中の賃金の一部を助成する。経費の助成率は中小企業75%、大企業60%、賃金の助成は1人1時間あたり中小企業1,000円、大企業500円だ。要件や手続きは改定されるので、申請の前に厚生労働省の最新の案内で確かめる。

業務とAIの間をつなぎ、本番で動くまで現場に入る職種はFDEとは?Forward Deployed Engineerの意味と仕事内容で説明している。PoCで止まった案件を本番に持っていく考え方はAIのPoC止まりを抜け出すにまとめた。社内の人と一緒にAIを業務に組み込み、仕組みを引き継ぐ支援はサービスで紹介している。

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